大阪大学 21世紀COEプログラム「原子論的生産技術の創出拠点」
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リーダー挨拶
この21世紀COEについて
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原子論的生産技術
原子論的生産技術とは
EEM
プラズマCVM
大気圧プラズマCVD
超純水のみによる電気化学加工
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SREM/STM
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リーダー挨拶

 
 このたび、大阪大学大学院工学研究科の超精密科学研究センターと精密科学専攻、物質・生命工学専攻応用表面科学講座は、文部科学省21世紀COEプログラムに採択され、平成15年度から「原子論的生産技術の創出拠点」(ナノメーターレベルの表面創成システムの開発)を形成する運びになりました。
 21世紀の日本を担う先端産業や自然の根源を明らかにする基礎科学からは、原子の大きさの精度が問題となる従来技術では製作不可能な光・電子デバイスの創出が要請されています。たとえば、光学素子では、重力波望遠鏡やX線顕微鏡、次世代EUV(Extreme Ultra-Violet)リソグラフィー等の高精度ミラーであり、また電子素子では、SOI(Silicon on Insulator)やSiC,GaNを基板とする半導体デバイスなどであります。このような究極の精度が必要な"物"を創り出すためには、従来の製造技術の延長線上を経験に基づき改良を重ねて洗練していく手法では道は拓けません。つまり、未踏の分野から求められる新しいデバイスを創るためには、経験やノウハウによらないサイエンスを基盤にした新世紀の製造技術の開発が必要であります。
 
 そこで、本21世紀COEプログラムでは、最先端の科学技術分野から要求される"究極の物づくり"に挑戦します。すなわち、原子レベルの精度が必要な光・電子デバイスを製作するために、製造プロセスに利用する物理・化学現象を原子・電子論的立場から理解し、精密に制御することによって極限まで活用する「原子論的生産技術」というべき独創的な生産技術を創出し続けるとともに、それを担う人材を育成することを使命とします。
 具体的には、まず表面創成プロセスに利用する表面を舞台にした物理・化学現象を原子・電子の振舞から理解することが必要です。そのためには、量子力学の第一原理に基づく計算機シミュレーションを駆使して、"物づくり"のプロセスに活用する表面反応過程を解明しなければなりません。また、この表面反応過程を表面科学の手法を用いた原子構造・電子状態の観察から実証することが必要です。そして、原子・電子のレベルから理解された現象を活用して新しい超精密加工プロセスを開発するとともに、超精密加工によって創製された表面上に、多層薄膜や微細構造を形成するための成膜・微細加工プロセスも新しく開発しなければなりません。当然、薄膜や微細構造の機能を第一原理シミュレーションから予測することは言うまでもなく、これらのプロセスによって作られた表面や薄膜、微細構造の機能を評価する極限計測技術の開発も不可欠であります。最終的には、開発したプロセスを組み合わせ、目的を達成するデバイスを作製し、そのデバイスの性能を評価するべきです。このように、プロセスに活用する自然現象を原子・電子レベルから解明することに始まり、その現象を制御する独創的なプロセス装置を開発し、実際に"物"を作り、計測評価するところまでを一貫して研究することを推進します。
 
 ところで、"物づくり"の技術は一般に縁の下の力持ち的存在であり、それを開発しただけでは研究成果を世の中に示すことは困難です。つまり、最先端科学技術の進展を左右するようなキーデバイスを創り出して、初めて社会に成果を示すことができます。そこで、宇宙やバイオテクノロジー、医療、電子・情報、環境・エネルギーなどの最先端の研究を実施している他大学や他研究機関の異分野の研究グループと学-学、官-学、産-学の連携・協力を積極的に実施し、それぞれの未踏分野を切り拓くために不可欠な光・電子デバイスを開発することによって、世界的な研究成果を社会に示すことに挑戦します。
 また、大学には、革新的な技術シーズとなり得る、優れた研究成果はありますが、それを具現化する"物づくり"の技術が無いために、世の中に役立つまでに至っていない事例が多々あります。このような最先端の基礎研究の成果を独創的な製品に結びつけるためには、先に述べたような新しい原理の「原子論的生産技術」が必須となります。つまり、大学の技術シーズを実用化する製造技術を開発できれば、大学の成果を社会に還元することになります。このように、我が国でしかできない高度な生産技術を開発することによって、大学で創造された最先端技術シーズを事業化できれば、高付加価値の"物"を創出することになり、日本の産業の生命線である製造業の復活に貢献できます。
 
 さらに、様々な基礎科学や先端産業で必要とされるキーデバイスを「原子論的生産技術」の研究開発によって実用化する能力を持つ人材を育成することを目指しています。すなわち、最先端研究に学生や若手研究者を参画させて、研究を通じた実践教育によって次世代の"物づくり"を担う研究指導者を育成します。そのために、(1)事業化研究リーダー育成プログラム、(2)横断型異分野連携人材育成プログラム、(3)エリート研究者発掘・育成プログラムの三つの教育プログラムを実施します。
 そして、研究の場としては、既にウルトラクリーンルームが稼働中であり、さらに世界最高性能の超純水と超高純度ガスが供給できる約500m2のウルトラクリーン実験施設が平成16年3月に竣工しました。研究環境は充分に整い、いよいよ「原子論的生産技術」を実用化する21世紀COEプログラムの本格的な研究プロジェクトを推進することになります。とはいえ、研究開発の成否は個々の研究者の目的意識と力量で決まることは言うまでもなく、研究進展の原動力は研究者個人の創造力であることを忘れてはなりません。未踏領域の研究開発に勇気を持って挑戦する、志の高い学生・若手研究者の活躍に期待します。
 
 今後とも「原子論的生産技術の創出拠点」の発展に邁進いたしますので、何とぞ関係各位の一層のご支援、ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
 
 拠点リーダー:
 遠藤勝義(大阪大学大学院工学研究科附属超精密科学研究センター長/教授)

 
 
 
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